IB・PYPだより

【IB/PYPだより】vol.10―「キッズゲルニカ2026」8月展示のご報告―

子どもたちの平和への願いが、広島のまちへ

のぞみ幼稚園の子どもたちと保護者の皆様が、平和への願いを込めて制作した「キッズゲルニカ2026」。

2026年6月の旧日本銀行広島支店での展示に続き、8月には、広島市内で開催された二つの平和行事で作品を展示していただきました。

のぞみ幼稚園では、2023年から「キッズゲルニカ」の制作に継続して取り組んできました。

今年度で4年目、5作品目となります。改めて子どもたちの「平和って何だろう?」という問いから始まった探究が、一枚の大きな作品となり、園の外へ、地域へ、そして社会へと広がっていきました。

【8月1日・旧日本銀行広島支店にてー向原園長とPYPCで欄干へ展示】

歌声とともに届けた平和への願い

8月1日、被爆建物である旧日本銀行広島支店で開催された「あなたのPieceが、みんなのPeaceに。~One Piece~ ハミングコンサート」に、「キッズゲルニカ2026」が展示されました。

人から人へとやさしい歌声をつなぎ、平和への思いを世界へ届けるコンサート。その会場で、0歳から6歳までの子どもたちと保護者の皆様、一人ひとりの色や形、思いが重なった作品を、多くの方々にご覧いただきました。

歌声とアート。表現の方法は異なっていても、そこには「平和を願い、その思いを誰かに届ける」という共通の願いがありました。

ハミングシンガーのかくばりゆきえさんも、子どもたちの作品とともに、ハミングを通して一人ひとりのつながりを表現できることを、大変喜んでくださいました。

【旧日本銀行広島支店でハミングコンサートを行った、ハミングシンガーのかくばりゆきえさんと向原園長】

原爆の日を前に、祈りが集う水辺で

8月5日には、原爆ドーム前・元安川親水テラスで開催された「第12回 ひろしまかがり灯の祭典」において、作品を展示していただきました。

原爆の日の前夜に「かがり灯」をともし、一人ひとりの祈り、愛、夢、希望、そして共生への願いを、広島から世界へ発信する催しです。

戦後間もなく始まった8月6日の「灯籠流し」とは異なり、「かがり灯の祭典」は、鎮魂と慰霊の祈りを炎に託すとともに、今を生きる私たちが平和への願いを未来と世界へ発信する、新しい平和文化として2015年に始まった祭典です。

原爆ドームを望む元安川のほとりで、「キッズゲルニカ2026」もまた、子どもたちから未来へ向けた平和のメッセージとなりました。

広島で育つ子どもたちの平和への願いが、歴史を受け継ぎ、祈りを共有する場所で多くの人々に届けられたことは、私たちにとって大変意義深い機会となりました。

【元安川親水テラスでの展示。向かって左はウクライナのキッズゲルニカ、右はのぞみ幼稚園の「キッズゲルニカ2026」】

【かがり灯と「キッズゲルニカ2026」。のぞみ幼稚園の作品は、ステージに向かって右側に展示されました】

子どもたちの問いから始まった探究

「自分たちにとって平和とは何だろう」
「平和のために、自分たちに何ができるだろう」

「キッズゲルニカ2026」の制作は、子どもたちが抱いたこのような問いから始まりました。

「世界探検」を通して、スペインの文化やゲルニカの歴史、そしてピカソの作品について知った子どもたち、その中でも、今年度は年長児が中心となり、自分たちが表現したい平和について考え、作品の原案をつくりました。

その思いを園のみんなで共有しながら、0歳から6歳までの子どもたちと保護者の皆様が表現を重ね、約1カ月をかけて一つの大きな作品を完成させました。

先生から与えられた一つの答えをただ知るのではなく、自分なりの問いをもち、友だちの考えを聴き、対話し、試し、表現する。そして、自分たちの学びを誰かに伝え、よりよい未来のための行動へとつなげる。

そこには、IB/PYPが大切にしている「探究」「エージェンシー(主体性)」「協働」「アクション」があります。

子どもの学びを支える「環境」

IBのPYPでは、子どもの学びは、先生が一方的に教えることだけによって生まれるものではないと考えます。

子どもが出会う人、もの、場所、時間、素材、出来事、そして人と人との関係性。そのすべてが、子どもの好奇心を刺激し、問いを生み、探究を支える「学習環境」となります。

今回、子どもたちは世界探検を通して遠く離れたスペインと出会い、ピカソの『ゲルニカ』から戦争と平和について考えました。さらに、友だちや先生、保護者の皆様と一緒に作品をつくり、旧日本銀行広島支店や原爆ドーム前という、広島の歴史と平和への祈りを伝える場所で作品を発表しました。

「世界について知ること」と「自分たちが暮らす広島について考えること」が、子どもたちの中で一つにつながったのです。

地域の方々との出会いや、作品に込めた思いを受け止めてくださる人々の存在も、子どもたちの学びを豊かにする大切な環境であり、かけがえのない「たからもの」です。


園全体で育てる「探究する文化」

今年度、のぞみ幼稚園は、IBワールドスクールとして園全体での取り組みを本格的に進めています。

PYPは、特定の時間や一つの教科だけで行うものではありません。園の教育理念とPYPの理念をつなぎ、子どもたちをどのような学習者として育てたいのかを園全体で共有し、子どもの姿を丁寧に観察しながら、実践と振り返りを重ねていく教育の枠組みです。

「キッズゲルニカ2026」も、子どもたちの問いを起点に、園全体で育んできた探究の一つです。

子どもたちだけでなく、保護者の皆様、教職員、地域の方々が関わり、それぞれの思いや力を持ち寄ったことで、学びは園の中から地域社会へと広がっていきました。

こうした学びの過程を記録し、共有し、対話を重ねながら、子どもも大人も共に学び続ける「探究する文化」を、これからも園全体で育てていきたいと考えています。

学びを伝え、共に子どもを育てるために

「IB/PYPだより」では、園で行った活動の結果だけでなく、その活動がどのような問いから始まり、子どもたちが何を感じ、考え、どのように学びを深めていったのか、その過程も折に触れ、お伝えしていきます。

子どもの学びを、保護者や地域の皆様と共有することも、PYPが大切にする「学びを共有する文化」の一つです。

そして、問いを、共に考え、行動する、成長し続ける仲間でもあります。

また、のぞみ幼稚園の実践が、幼児期の教育について考える方々や、これからの日本の教育に関心を寄せる方々にも届き、子どもを中心とした教育について考え合う、小さなきっかけになれば幸いです。

日々の小さな関わりから、平和な未来へ

今年、広島は被爆81年となる「原爆の日」を迎えました。

平和は、特別な日にだけ考えるものではありません。

子どもたちの日々の生活や遊びの中にある、一つひとつの小さな関わりが、平和な未来をつくる力へとつながっています。

「キッズゲルニカ2026」の制作と展示を通して生まれた問いや思いを、これからの園生活や探究へとつなげながら、私たち大人も、世代や文化の違いを越えて、子どもたちとともに平和について考え続けていきたいと思います。

最後になりましたが、作品をご紹介くださった広島平和市民の会の皆様、貴重な展示の機会を設けてくださった各催しの主催者の皆様、そして制作にご参加、ご協力くださった保護者の皆様に、改めて心より感謝申し上げます。

PYPC 横山はるみ